市川陽子
TRANSFORM 変容
2019年07月06日(土) − 07月21日(日)

市川陽子のつくる造形物は、動物の皮で器をつくり、漆を塗って硬化させる「漆皮−しっぴ」という技法でつくられている。その歴史は古く、飛鳥時代まで遡ることができるが、私の興味は彼女が取り組む漆皮への新たなアプローチとその思想にある。市川の漆皮は伝統技法から少し外れ、生皮でなく鞣した皮を使う。そして皮を漆で完全に覆わず、その質感を残している点が最大の魅力である。「生き物を材料にしているからか、私は皮革のいれものの内側にはマジカルな機能があるような気がします。乳がバターになるような。」という市川の言葉が印象的で、考えてみれば、立体的な命を包んでいた皮膜は、鞣されて平面的な薄い皮となるが、それらは縫い合わせることで新たな立体となり、再び何かを内包する存在となる。その変容の過程こそが彼女の作品の核である。作品の外皮は漆の柔らかさと硬質さをまとい、内側には動物の命を包んでいた温度ある気配が残されている。手にとり、それを感じていただきたい。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
市川 陽子
1985年 大阪生まれ。2011年 京都市立芸術大学大学院修士課程 漆工 修了。現在、京都を拠点に制作。
過去の展示:2018 年GALLERY crossing「いれもの」(2 人展)
INFORMATION
市川 陽子
TRANSFORM 変容
2019年7月6日(土)- 7月21日(日)
12:00 - 19:00(最終日17:00)
休廊日:火曜定休
作家在廊日:7月6日(土)