kanehen
LAYERS
2019年11月02日(土) − 11月10日(日)
レイヤー。重なり。紅葉した落ち葉のような、鈍い光がゆっくりと動くkanehenのモビール。作者の宮島司緒里は真鍮を切り出し、その重なりのバランスを組み立て、一つの静かな形を作る。長年金属を叩き、鍛金の技法で器や生活道具を手がけてきた彼女が作るモビールは、用の美から離れても、生活の重なりを感じる近しい存在である。真鍮のレイヤーが移ろい、ゆらゆらと、また同じ位置へ帰るのを眺めながら空間に現れる瞬間のコンポジションを楽しむ。せつなの静止画が重なり、美しい動画となって記憶に残る。モビールは、暮らしの空間の中で一定の距離をおいて存在する、いろいろな対象物と私との、調和をはかる装置のような存在である。秋の風とともに、静かに重なる楽しい造形を楽しんでいただきたい。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
kanehen 宮島 司緒里
1998年 東京芸術大学大学院 美術研究科 鍛金専攻修了。2003年 kanehenとして生活の中の金属の品をつくりはじめる。2003〜2010年 松本クラフトフェア出展。2005〜2011年 松本クラフト推進協会の機関誌「掌」制作に携わる。2010年 岐阜県に転居、結婚、出産、家族との生活と制作を続ける。
矢野容子・佐藤朱理
PIECES 欠片
2019年12月07日(土) − 12月16日(月)
佐藤朱理 a ka ri, Between earring
矢野容子 yokoyano 2019, necklace
装身具、ひとの姿を飾るもの。身につけることで完成する形。それ単体では不完全な美しさの欠片が、身体と合わさることで人の魅力を引き立てる。今展では装身具をテーマに、二人の作家をご紹介します。矢野容子 − yokoyanoの作品は、バーナーワークによりガラスを編むように紡ぐ有機的な形を代表作に、柔らかな質感が肌の美しさを引き立てる、クリアな存在感。佐藤朱理 − a ka riは白磁とアクリルの異素材の組み合わせにより、モダンで軽やかなリズムを装いにプラスします。どちらも、特別なジュエリーではなく、日々の装いに遊びをプラスするピースとして、楽しんでいただきたい装身具です。
GALLERY crossing 黒元 実紗
矢野容子 yokoyano 2019, Earring
PROFILE
矢野 容子
1981年 愛知県生まれ。2002年 東京国際ガラス学院基礎科を卒業。グラスマウス スタッフとして勤務。2003年 伊丹国際クラフト展 ジュエリー 入選。試験管に用いられる耐熱ガラスを使い、アクセサリー・ランプシェードを制作する。yokoyanoとして作品を発表。
佐藤 朱理
北海道生まれ。言葉を組み合わせ、詩を紡ぐように、シンプルなモチーフを繋ぎ構成することで形の新たな魅力を引き出し、身に着けることで完成する美しさを目指す。磁器土を素材とした、コンテンポラリージュエリーブランド「a ka ri」として作品を発表。
今後の展覧会スケジュール
1月11日(土)~ 1月26日(日) 林亜希子 「Variation」
2月29日(土)~ 3月8日(日) 稲富淳輔 「巡礼」
木下令子
憬
2019年10月05日(土) − 10月19日(土)
木下令子 2019, 日照時間 20×20cm アクリル、印画紙
木下令子のアトリエには大きな窓があり、眼下一面の梅林と、刻々と変化する空の色がスクリーンのように広がる。彼女はその窓辺に紙を並べ、日光を使って「製作」するが、傍目にそれは、無造作に散らかり日焼けした紙片にしか見えないだろう。木下の作品は、日光による印画紙の感光、紙の日焼け、皺や折目、エアブラシから拡散される霧状の絵の具をメディアとし、時間の経過そのものを表現しようとする行為である。2017年の作品発表の際に、『写真でもなく映像でもなく、時間の経過そのものを絵にすることはできるだろうか。』と彼女が記すように、印画紙を使った作品は、彼女の手によって描かれ、コントロールされてはいるが、日の光によって「さらに加筆される可能性」があり、それが鑑賞者の手に渡ったのちも続くことで成立している。(実際に大きな変化はないが、印画紙は感光し続けている。) また、日焼けを利用した作品は、日々くりかえす作家の作為と日の光という現象の間でやりとりされる往復書簡のような存在だ。 これらの作品はアートの文脈で製作されているのだが、同時に工芸的で身近な存在に感じる魅力がある。それは、作品の素材として折り目や皺という「生活」を感じる人の行為が在り、作家の行為に「経年変化」というものへの憧憬の念を感じるからかもしれない。 今展のタイトル「憬」とは、憧れ、想い巡らせることを意味する。木下令子の作品は、生活の中で見落とされている些末な存在に気づきを与え、その存在を示すことで、ここではないどこか − 想像の旅へ連れて行ってくれる。
GALLERY crossing 黒元 実紗
木下令子 2019, 日照時間 16.5×12cm アクリル、印画紙
木下令子 2014, echo 10.5×14.8cm アクリル、日焼けさせた紙
木下令子 2013, 日溜まり 45.5×43.5cm アクリル、日焼けさせた紙
PROFILE
木下令子
1982年 熊本生まれ 。 2007年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。 2009年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。 これまでの主な個展|2018 年 「 夕べがあり、朝がある 」 LOOP HOLE/ 東京、 2017年 「 日のふるまい 」 HAGISO / 東京、 「 ゆるやかな仕掛け」switch point / 東京、2016年 「 日照時間 」komagome cas 14-1 / 東京、 2015年 「 日のなかの点 」 清須市はるひ美術館 / 愛知 ほか 所蔵|清須市はるひ美術館
林志保
好奇心
2019年09月07日(土) − 09月23日(月)
林 志保 2019, 壁掛け fusion 黒陶
ギャラリーという場所を訪れる一つの理由に「好奇心」がある。また、「好奇心」は人がものづくりをする原始的な衝動でもある。陶芸家・林志保の作品は、用に依らず、抽象的でありながら、その実、何を表すでもない − オブジェと呼ばれるようなものが多い。それは純粋に作家の好奇心の産物であり、空間におけるあそびのようなものなのだが、穴の空いたトーラスや、切断された立体を再構成し、そのズレによる違和感が空間に新たなリズムを生み出す造形は、私たちの空間に対する好奇心を掻き立てる。彼女の作品は、これまでもそうではあったが、昨今新たに取り組んでいる黒陶のブラックと窯変を纏い、一層コンテンポラリーな存在になった。平坦な壁にあそびを生み出す壁面作品や、自由な花あそびを誘う花器は、ギャラリーの白い空間だけでなく、和洋暮らしの空間にも意外なほどマッチするのも、彼女の作品が支持される魅力なのだろう。好奇心は人生を変える。ぜひ、最大限の好奇心を抱え、これらの存在を楽しんでいただきたいと思う。
GALLERY crossing 黒元 実紗
林 志保 2019, 壁掛け Untitled 黒陶 / 花器 torus
林 志保 2019, 壁掛けオブジェ 環の象 黒陶
PROFILE
林 志保
1984年 兵庫県神戸市生まれ。2008年 京都市立芸術大学 工芸科漆工専攻 卒業。2014年 多治見市陶磁器意匠研究所修了。現在、岐阜県多治見市にて製作を行う。
市川陽子
TRANSFORM 変容
2019年07月06日(土) − 07月21日(日)
市川 陽子 2019, Pocket, 漆皮
市川陽子のつくる造形物は、動物の皮で器をつくり、漆を塗って硬化させる「漆皮−しっぴ」という技法でつくられている。その歴史は古く、飛鳥時代まで遡ることができるが、私の興味は彼女が取り組む漆皮への新たなアプローチとその思想にある。市川の漆皮は伝統技法から少し外れ、生皮でなく鞣した皮を使う。そして皮を漆で完全に覆わず、その質感を残している点が最大の魅力である。「生き物を材料にしているからか、私は皮革のいれものの内側にはマジカルな機能があるような気がします。乳がバターになるような。」という市川の言葉が印象的で、考えてみれば、立体的な命を包んでいた皮膜は、鞣されて平面的な薄い皮となるが、それらは縫い合わせることで新たな立体となり、再び何かを内包する存在となる。その変容の過程こそが彼女の作品の核である。作品の外皮は漆の柔らかさと硬質さをまとい、内側には動物の命を包んでいた温度ある気配が残されている。手にとり、それを感じていただきたい。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
市川 陽子
1985年 大阪生まれ。2011年 京都市立芸術大学大学院修士課程 漆工 修了。現在、京都を拠点に制作。
過去の展示:2018 年GALLERY crossing「いれもの」(2 人展)
鮫島陽
早苗
2019年06月15日(土) − 06月23日(日)
鮫島 陽 2019, 塩壺
2018年に開催した初個展「Boat 舟」から1年。岐阜県・多治見市で作陶する鮫島陽の作品をご紹介します。今展では、舟という抽象的なイメージから歩みを進め、小壺や皿など、生活に近いうつわが並びます。白から灰へのグラデーション、そのあわいに見える桃色を眺めるにつけ、家族の田を手伝い、米を食し、籾がらを使って作品に表情をうつした焼締を作る彼女が理想に語る「暮らし」というもののはじまり、その兆しが、ぼんやりと作品に現れてきたように思います。田の土に浮かび、みのりへ向かう、青い早苗のようなもの。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
鮫島 陽
長野県生まれ。2017年多治見市陶磁器意匠研究所修了。現在愛知県にて作陶。
成田周平 アリーズ・カティキ
Roots
2019年04月13日(土) − 05月05日(日)
成田 周平 2019, Roots 蓋物
アリーズカティキ 2019, Dolly & Dolly ドレス
Roots; ルーツ。自らの記憶と感情の始まりを超える想像の旅。岐阜県多治見市で作陶する成田周平と、ペルシャ生まれニュージーランド在住のアリーズ カティキ。生まれも育ちも異なる2人のアーティスト、それぞれの「Roots; ルーツ」を巡るかたち。今展のテーマは、自分自身という超個人的なスケールから出発し、祖先という他者へつながり、時間を遡るほどに自分自身の存在が見えなくなる終わりのない循環を想像することから始まる。陶芸作家・成田周平がつくるのは、球体の粘土の塊から手びねりで成形されるユーモラスなうつわ。化石や骨を思わせる造形と有機的な質感の蓋物を中心に、プレートやマグなど日曜食器も並ぶ。また、アリーズ カティキは祖母から伝授された編物や刺繍を表現手段に、世界中を旅し、その土地からのインスピレーションと徹底的なリサーチによる作品を制作するアーティスト。本展では、彼らの作品 ─ 陶器と衣服、それぞれの表現に現れるルーツの断片に触れ、遥かなる過去と現在の日常、自己と他者の間を往来しながら、「今、ここ」にある現代的表現をお楽しみいただければと思う。それぞれのルーツ、はじまりの季節を感じて。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
成田 周平
1989年 名古屋学芸大学卒業。2017年 多治見意匠研究所を卒業。主に手びねりの技法で器などを制作。現在、愛知県にて作陶を行う。
アリーズ・カティキ
1989年 インド・ムンバイ生まれ。ニュージーランド・オークランド在住。2012年 オークランド大学 美術史・英語の学士号を取得。ニュージーランドを拠点に制作活動を行う。自身のルーツ、民族の歴史などを題材に、世界中を旅行しながら現地での滞在制作を行い、刺繍やニッティングの技法を使ったアートワークを発表。国内外で高い評価を得るアーティスト。
https://www.areezkatki.co/
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Areez Katki “Dolly & Dolly” コレクション
今展では、日本初となるAreez Katkiの衣服コレクション展示販売を致します。2018年、アリーズはインドに長期滞在し、彼のルーツであるパーシー・ゾロアスター教徒の一族と生活を共にし、彼らの伝統的なて仕事をリサーチしました。手織物や刺繍、様々な衣服のテキスタイルとその裏側にある民族的歴史を背景に生まれたのが、新作の衣服コレクション “Dolly & Dolly” です。
インド各地で収集されたヴィンテージの手織り生地を再利用し、伝統的民族衣装からインスパイアされた洋服のフォルムを型に起こして制作された衣服は、作家本人の個人的物語から抽出された歴史的手仕事の現代的な解釈です。彼の希少なコレクションをぜひご覧ください。
沙里 かほりとともに、
星筥
2019年05月18日(土) − 05月26日(日)
沙里 2019, 練香 星筥 (case: yokoyano)
目には見えないものを視る。調香師・沙里の「かほり」は、眠っていた感覚、本能のようなものを呼び醒ます強さを持っている。それは決して良い香り、心地よい香りというようなひ弱な言葉で表現できるものでなく、脳の奥の何かをぐっと掴まれるような力強さや、おぼろげな記憶を手繰る気配があり、心震わせる音楽のような調べを持つ複雑なものだ。今展は古代中国に端を発する自然哲学・五行思想により万物を構成する五元素 –木・火・土・金・水をテーマに、彼女がこれまでに重ねてきた「かほり」の鍛錬と、その感性の高まりによる一つの世界の形を調香という形で表したものである。木・火・土・金・水それぞれの元素的な「かほり」と、それらを結ぶ6つ目の「かほり-星筥(ほしはこ)」など、今までにない新作が発表される。自ら植物を採取・蒸留し、実験的な香りの抽出を重ねる沙里。これまでに彼女が作り出してきたどれよりも、つよくて芯を捉えた、目に見えない、気配の表現を感じていただけたらと思う。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
沙里
2010年 IFA認定アロマセラピスト(イギリス発祥の国際認定資格を取得)。2011年 フレグランスコンテストで環境大臣賞受賞。2012年 かほりとともに、発足。2015年 ミラノ万国博覧会にてフレグランスが使用される。
2019年 GALLERY crossing 個展
2019年 ニュージーランド・オークランドにてGALLERY crossingよりグループ展参加
様々な植物から自身で抽出したエッセンスを用い、場所や人、音や絵、季節から受け取る感覚を調香で表現するアーティスト。アトリエ、ワークショップ、講演も国内外で多数。
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ソリッドパフューム・オーダー会
5月18(土) 19(日)
御自身だけの「かほり」を仕立てます。木・火・土・金・水の五つのかほりをベースに、100%天然精油、自らが植物採取・蒸留した稀少なエッセンスから調香します。 ガラスジュエリー作家・矢野容子によるオリジナルケースに入れてお渡しいたします。
12:00- /13:00- /14:00- /15:00- /16:00- /17:00-
※オーダー18,000円〜
調香茶会「香織」
5月25(土) 26(日)
和菓子なのと沙里によるかほりを織(し)る・味わう会を開催します。沙里による「星筥」のかほりを紐解きながら、五つのかほりの干菓子と、調香あんみつをお楽しみいただける、少人数での茶話会です。
①11:00-11:45 ②13:30-14:15 ③15:00-15:45 ④16:30-17:15 3,000円
[ご予約について]
日時、氏名、電話番号をメールにてお知らせください。こちらからの返信をもって予約確定とさせていただきます。
熊谷峻
祈りの痕跡
2019年03月09日(土) − 03月24日(日)
熊谷 峻 2019, Vase
熊谷峻のガラスに出会い、美しという感情はどこからやってくるのか、あらためて自身に問いかけた。高温の炎に煮えたぎり、土や金属と溶け合い、カオティックな重みあるその作品は、ともすれば濁り、朽ちて汚れたようで、しかし光に透かすと浮かび上がる景色は紛れもなくガラス特有の清潔な美しさであり、そこには色気と尊さのようなものを感じる。自身の制作過程の、そのひとつひとつに奇跡の出来事の「痕跡」があるのだと表し、1000°Cの窯の中で起こる、目には見ることができない出来事に心を寄せ、作ることを「祈ることに似ている」という熊谷峻。ギャラリーの空間に並ぶ壺や蓋物、ユーモラスな路傍の神像たちに時を感じ、その祈りの痕跡をなぞることができる幸福を、共に感じていただければと思う。
GALLERY crossing 黒元 実紗
PROFILE
熊谷 峻
1983年 秋田県生まれ。2006年 秋田でガラスを学ぶ。2012-2016年 富山ガラス工房所属。2017年 秋田に戻り制作を行う。ガラス鋳造の技法を展開させ、主に器や像を制作する。
林亜希子 qualia-glassworks
FOG
2019年02月09日(土) − 02月24日(日)
林 亜希子(qualia-glassworks) 2019, Stand Light_Large
吹きガラス工房qualia-glassworks。デザインから製造までの全作業を一人で手がける林亜希子は、日々黙々と、淡々とガラスと向き合う。グラスでもランプシェードでも、彼女の作るものは一貫して静かな佇まいを持ち、そのガラス質は決して主張せず、しかし確実な存在感を持っている。そしてそれらは彼女自身を映しているようにも思う。修行により培った確かな技術と繊細な感覚から生まれる、生活空間の中での存在感やサイズ感は心地よく「ちょうどいい感じ」を醸している。今展のテーマは「霧」。小さな水の粒子が漂う霞のように、しっとりと美しい透明なガラス。ギャラリーには新作のスタンドライトやランプシェードなどの照明器具、グラスやプレートなどの器が並びます。グレーカラーの霧の向こうに見える光。内に秘めたる情熱の人、林亜希子がつくる霧の向こうには、あたたかい暮らしが見えるだろう。
GALLERY crossing 黒元 実紗
林 亜希子(qualia-glassworks) 2019
林 亜希子(qualia-glassworks) 2019, Plate smoke
林 亜希子(qualia-glassworks) 2019, Stand Light_small
PROFILE
林 亜希子(qualia-glassworks)
1997-2002 大阪府大阪市 旭硝子製作所勤務。2002-2008 大阪府和泉市 fresco勤務。2010より岐阜県美濃加茂市にガラス工房を構え qualia-glassworksとして制作活動を行う。
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スタンドライト・オーダー会
会期中、新作のスタンドライトのオーダー会を開催します。木製台や照明パーツをお選びいただき、オーダーができます。ガラスのシェードは全て一点づつ色や形に違いがありますので、お好きなものを選んでいただき、組み合わせてお楽しみいただけるシンプルで美しいライトです。